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本当に必要な特殊建築物等定期報告制度とは・・


特殊建築物等定期報告制度をクリアするための定期調査ばかりにとらわれると、 調査費ばかりか、費用が無駄にかかってしまうことがあります。

特殊建築物等定期調査の無駄のない適切な発注のしかた、見積りの取り方・・・、
発注する際の「おまかせ」でない発注方法の注意事項を・・・、
そして、
建築を長期維持管理する中で、定期チェックである特殊建築物等定期調査と、大事業である大規模外壁改修との関係をどのようにスケジュールするか。

特殊建築物等定期報告制度のQ&Aを下記にまとめてみました。
これを頭に入れて、調査を発注しましょう。

1.一定の規模以上で多くの人が利用する建築が対象です

2.外壁の打診調査の必要十分条件とは

3.全面打診は、建築全体打診ではない!

4.築年数35年までの塗装壁は全面打診は不要?

5.落下により歩行者等に危害を加える恐れのある部分とは

6.法の要求を見極める

7.特殊建築物等定期調査・報告に必要な費用

8.特殊建築物等定期調査費以上に大きな問題も

  

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1~8を具体的に説明していきます。 



1.一定の規模以上で多くの人が利用する建築が対象です

特殊建築物等定期報告制度、下記は福岡市のホームページですが、ここには、制度の概要や、特殊建築物等定期調査・報告が必要な施設の規模などが示されています。

http://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/kansatsu/life/008_2.html

ア.特殊建築物等(劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、学校、百貨店等で一定規模以上  のもの)
イ.昇降機(エレベーター、エスカレーター及び小荷物専用昇降機)
ウ.遊戯施設(コースター、観覧車、メリーゴーラウンド、ウォーターシュート、ウォーター  スライド等)
エ.建築設備等(換気設備、排煙設備、非常用の照明設備)


ア.に記述しているように、不特定または多くの人が利用する施設で、一定規模以上の建築が対象です。用途によりますが、3階以上の階に一定規模以上(集合住宅は5階以上)などの  条件に適合する建築に調査報告義務があります。
対象建築物は、上記ページに詳しく書いていますが、ここでは、別に書きたいことがありますので、適用対象については省略いたします。

イ.は、定期点検をエレベータメーカー等に依頼しているはずですので、そこに直接依頼す  れば安価に調査報告できます。

ウ.は専門外なので説明できません。





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2.外壁の打診調査の必要十分条件とは

特殊建築物等定期報告制度の全体について書くのではなく、
この特殊建築物等定期調査の中でも、最も手間と費用がかかる部分、調査の見積りをとるにも、内容が大きく異なる「外壁の打診調査」について書こうと思います。

2012年に発生した、笹子トンネル天井板落下事故が発生した際に、その点検体制として、
「吊ボルトの検査において、トンネル頂部は、数メートル離れていて手が届かない為、打診調査は行われず、目視の調査」が行われていた、と報道されました。
常に、真下を車が往来し、落下すれば、即、死に至る数トンのコンクリート板の点検体制としてはあまりに不充分な点検しかされていなかったことに驚きました。
土木の方が建築よりも単価が高く、点検なども、事故が発生した場合の被害や影響の大きさから、より入念に行われなければならないし、そうのように行われていると思っていたからです。

建築の、特殊建築物等定期報告制度においては、たとえ、手が届かない部分においても、タイルが落ちて人が怪我をする恐れがある箇所は、寄付きが困難な高所でも全面打診調査を求めています。

この打診調査が必要な箇所について、
上記、福岡市のページの最後に列記されている「質問および回答」の中に詳しく述べられています。
特に
「建築物外部のタイル、石貼り等、モルタル等の劣化及び損傷の状況に関する調査について」

http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/129036_50335303_misc.pdf

の中に、外壁について打診調査が必要な建築やその時期、打診が必要な範囲が示されています。



このページに記述している内容を、より解りやすく説明したいと思います。

竣工後10年を超えた建築または、外壁改修工事や全面打診から10年を超えた建築は、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全てを全面打診すること。
また、
上記の10年を超えない建築については、目視および部分打診すること。
即ち、
3年おきの調査では部分打診し、10年超おきに全面打診すること
と読み替えることができます。

ここで、
打診調査には、部分打診と全面打診 がありますが、この違いは、
a.部分打診
廊下や屋外階段・バルコニーなどから、手が届く範囲を打診する。
面積割合では、外壁全体の数パーセントを打診したことになり、建築の劣化の概略を把握することができます。費用はそれほどかかりません。

b.全面打診
手が届かない範囲も、足場・ゴンドラ・ブランコなどを使用して、打診が必要な部分の全て を打診すること。検査対象の100%を打診するので、検査対象の劣化の状況を具体的に把握することができます。特殊な設備が必要で時間もかかるので部分打診とくらべても、数倍以上の費用がかかります。





3.全面打診は、建築全体打診ではない!

特殊建築物等定期報告を求める法令では、
落下により歩行者等に危害を加える恐れのある部分のすべて を「全面打診等」と規定されており、
即ち「ある一定部分についての全面打診」すれば良いとされています。
ところが、全面打診については、建物全体の打診と混同 されているように思います。
このことについては後述します。

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4.築年数35年までの塗装壁は全面打診は不要?

特殊建築物等定期調査における全面打診の対象となる外壁とは、
「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」
ですが、
それはどのような外壁でしょうか。

原則(解かり易く省略した表現とします)

タイル張り、モルタル塗 外壁が対象になる部分です。(石張りも対象ですが省略します)

タイルやモルタルなどの仕上げが構造体から剥離して落下する恐れがあるため、打診調査の対象となっています。注意したいのは、コンクリート塗装仕上げの建築の部分は、打診調査の対象外です。

例をあげて、外壁の打診等の必要の有無を解説します。いずれの例も一定規模以上あり、特殊建築物等定期調査が必要という前提です。
特殊建築物調査が必要であっても、外壁の違いによって、外壁の打診等の必要性が異なります。

例1 道路に面して建つ建築の例


Case1外壁:コンクリートに塗装
外壁がコンクリートの上塗装(アルミパネルなども)の建築は、外壁仕上げ落下の恐れが無いため、(特殊建築物等調査報告制度では)外壁の打診等の必要はありません。


Case2外壁:3階までがタイル張り、上階はコンクリートに塗装
3階までが、仕上げ落下の恐れがあるので、全面打診・部分打診など(期間により、いずれか)が必要です。しかし、4階以上は Case1 と同様に特殊建築物等定期調査では、外壁の打診等の必要はありません。



①タイル張り、②モルタル塗り、③コンクリート打放(塗装仕上げ含む)の見分け方 をまとめてみます。

①タイル張り は素人でも容易に判断できるでしょう。

②モルタル塗り
外壁がモルタル塗りとは、白や茶色など、塗装している建築が、モルタル塗りの可能性があります。
塗装の上からだと、コンクリートに直接、塗装しているのか、コンクリートにモルタルを塗りその上に塗装しているのか、素人では判断が難しいです。
しかし、
近年の鉄筋コンクリート建築(おおよそ築35年より新しいもの)は、外壁にモルタル
を塗っていません。コンクリート打放に塗装(吹付タイルを含む)していますので、落下するモルタルは無く、よって、特殊建築物等定期調査では、外壁の打診等は求められていません。
それより古いものは、図面が有れば、仕上表や矩計図を確認すればモルタルを塗っているか否かわかります。

③コンクリート化粧打放:文字通り、コンクリートを露出させた外壁なので、容易に判ります。特殊建築物等定期調査では、外壁の打診等は求められていません。
コンクリート打放塗装仕上げ:塗装(吹付タイルを含む)している場合、前述のように、モルタルの有無が難しいのですが、、外壁の打診等は求められていません。
おおよそ築35年より新しい建築は、モルタルを塗っていません。落下するモルタルは無く
よって、全面打診は求められていません。

但し、老朽化により、鉄筋が錆びて爆裂を起こす可能性もあり、この法令とは別に、一定間隔で外壁改修が必要です。

特殊建築物等定期報告制度について延べたものであり、一定規模以上の建築について書いたものです。個人住宅などでは、外壁にモルタルを塗っている例は、現在でもたくさんあります。

仕上げが落下する可能性が無い建築は、制度上は打診調査の必要が有りませんので、調査費の見積りに大きく影響します。これを把握していれば、調査方法が適切か、調査費用が適切かの判断基準となるでしょう。






5.落下により歩行者等に危害を加える恐れのある部分とは

次に、全面打診が必要な 
「落下により歩行者等に危害を加える恐れのある部分」
とは、どのような部分でしょうか。

外壁から仕上げが剥落した場合、当該部分の高さが高い程、落ちる範囲が広くなることから、
外壁の直下から高さの1/2の範囲 までを、危害を加える恐れのある部分とし、
この範囲に、
公道、不特定または多数の人が通行する私道、構内道路、広場を有するもの。
に該当する部分が、対象になります。

具体的に、例を挙げると、

例2
下の図は、外壁がタイル張りの特殊建築物の配置を示しています。
左側が道路で、それ以外の3方は、隣地に接しています(他の建築が建っている)。

建築が道路に近い( 建築から道路の距離 < タイル壁の高さ÷2 )場合、
外壁の東西南北の4面のうち道路側(A)の部分の外壁は、
「落下により歩行者等に危害を加える恐れのある部分」となるでしょう。

残りの3面(B)(C)(D)については、敷地の利用形態により異なりますが、
不特定の人が通行する・多くの人が通行する通路があれば、10年超おきに全面打診が必要ですし、通路や広場がなければ、特殊建築物定期報告制度上は全面打診は求められてなく、目視および部分打診で調べることになります。

また、(D)部分に不特定または多数が使用する駐車場などがあれば、Dに面する外壁も、10年超おきには全面打診が必要な箇所の対象となります。






歩行者等の安全を確保するための対策
また、通路などの上部に ひさし等 が有り、仕上げが剥落しても、ひさしが受け止めて、歩行者等に危害が及ぶことがない場合は、そのひさし等により防護できる外壁タイルの範囲は、全面打診から除外し、部分打診とすることが出来ます。

例2の公道に面して、充分なひさしがあれば、エントランス周りの「歩行者等に危害を加える恐れのある部分」の面積が減るので全面打診が必要な面積も小さくなります。
(下図の Case4 も同様)


例3 道路に面して建つ建築の例


注意したいのは、建築の高さ・外壁の高さではなく、「タイル張り(モルタル塗り含む)の部分の高さ」であるということです。
特に、低層階だけにタイルを張っている建築(前述の Case2 )においては、
「歩行者等に危害を加える恐れのある部分」の面積が減るので、全面打診をする面積は、かなり狭まります。
この全面打診する範囲を適切に判断することが大切で、調査費の見積りに大きく影響します。




6.法の要求を見極める

こうしてみると、特殊建築物定期報告制度・特殊建築物等定期調査では、
「10年を経過した建築は、一律に足場を架けて、外壁の全てを打診せよ」、というような過大な要求はしていません。


建築によっては全面打診ではなく部分打診でも調査できる部分は少なくありません。
これは、決して、調査を簡便に済ませて調査費を削減できることを強調している訳ではありません。
前提として、10~15年毎に、足場を架けて外壁のメンテナンス(外壁改修)をすることは必要です。これが前提の話ですので、全面打診をしなくてよい部分は、永遠に打診しなくてよいと言っているのではありません。

では、何故こう書くかと言うと、特殊建築物等定期報告制度を利用して、一部の会社が、建物全体の打診の必要が無いにも関わらず、拡大解釈し、定期調査のために足場を架けて建築全体の打診を勧める例があるようです。





7.特殊建築物等定期報告に必要な費用

全面打診は、部分打診に対する言葉ですが、一方で「建物全体の打診」と混同して使われているように思います。

建物1棟全体の打診調査に必要な費用(建築の規模・用途により異なります)
  a. 部分打診調査:数万円~
  b. ブランコやゴンドラ:100万円前後~
  c. 足場を架ける:数百万円~

建築の形状によって、部分打診だけで調査できない建築もあり、その場合は、 a と b を組み合わせる、b または c を選択するということも有ろうかと思います。


しかし、
特殊建築物等定期調査だけのために ブランコやゴンドラ、足場を架けることは合理的ではなく、事業規模の大きな 大規模改修工事(10年~15年毎)で 足場を架けて調査・修繕を行い、特殊建築物等定期調査では(3年ごと)目視および部分打診し、定期報告制度だけのための全面打診を回避することが現実的です。
そうすれば、3年ごとの特殊建築物等定期報告にかかる費用は、上記a.の数万円~におさまるでしょう。
実際にどのくらいの金額になるかは、
建築の規模、用途、調査範囲、過去の調査資料の有無によって、異なります。
100戸以下のマンションであれば、10万円前後が相場かと思います。
これまでの、一度も特殊建築物等定期報告の調査をしたことが無い場合の初回は、高くなることが一般的です。
さらに、建築の図面すら無い場合は、最初に建物の調査、図面化が必要になり、その分が加算されます。





8.調査費以上に大きな問題も

特殊建築物等定期調査費用について、打診調査の方法により大きな開きがあることは注目すべきことですが、
足場を架けて特殊建築物等定期報告制度のための調査を行うということはには、もっと大きな問題が潜んでいます。

定期調査だけのつもりで足場を架けても、必ずひび割れや浮きが見つかりますので、
調査だけで済まず、そのまま大規模修繕になだれ込むことになります。

「折角、足場を架けたので、補修工事をした方が「お得」ですよ。調査だけで足場を解くと
工事の時に、再度足場を架ける必要があり、勿体無い。お安くしときますよ。」
ということになります。補修をすると跡が残りますので、外壁全体の塗装工事も必要になり、
補修工事という名の大規模修繕工事が始まります。

そうなると、事前の設計数量の計算や、予算の検討、工事会社の競争見積りや、
監理者・第3者のチェックなどが一切ないため、競争のない単価で工事を発注せざるを得な
くなり、工事数量の清算において第3者のチェックがされないままの精算となります。
下記のページの後半で説明しています。

設計と施工 分離による大規模改修のページ

マンションの場合、入居者に対しての周知徹底や準備も無く、騒音や粉塵についての心構え
もないまま工事に入ることになります。

通常、特殊建築物等定期報告と、大規模改修工事では、事業規模・必要な費用が2桁異なります。
競争の無いまま、小さい事業規模の特殊建築物等定期調査から大規模改修工事に移行すること、もしくは、定期調査と大規模改修工事を同時に発注すると、工事に競争が働かず、工事費が無駄にかかってしまいます。

事業規模の大きな大規模改修工事(足場は必須)では、しっかりと競争見積りで工事費を抑え、定期報告では目視および部分打診で必要十分な調査を行うことが大切で、そのためには、
建築の長期保全計画を立てておくことが重要です。



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番外編

・「おまかせ」はやってはいけない。
・「ご近所だから」は要注意。
・台風で瓦は飛んであたりまえか?







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